高知県知事時代

  • 産振計画⑦~さらなる飛躍願い~
  • 番外編

各論(観光編 下)

 地域への観光誘客の強化と、脱ドラマに向けた観光資源の磨き上げ。この2点が「龍馬伝」後の産業振興計画の軸となった。

《地域博覧会開催!》

 第一の「地域への観光誘客の強化」については、当然、地域の観光資源の磨き上げが重要であった。ただ、それに加えて、域内の各所が協調して広域の周遊ルートを作り上げ、これを対外的に上手くPRする仕組みが必要であった。地域の観光資源は継続的に手を入れなければ陳腐化する。更には、時々の流行に応じて見せ方を変えることも必要だ。状況に応じて素早く動ける仕組みが必要なのだ。
 「であい博」「ふるさと博」の後には、「楽しまんと幡多博」、「まるごと東部博」、「奥四万十博」といった地域博覧会が、毎年度順次開催された。
 これらは、地域の皆様の発意によるものだし、主役は地域の皆様であったが、県としても、職員の事務局派遣、対外PR、観光拠点整備などにおいて、全面的に支援した。そして、その狙いは、博覧会開催準備、開催期間中を通じて、最終的に各地域に上述の仕組みを作ることにあった。 
 結果として、県内各ブロックに広域観光協議会が順次立ち上がっていった。仁淀観光協議会は仁淀ブルーを、東部観光協議会は世界ジオパークを軸とする、というように、それぞれ核となる観光資源を持ちながら、その磨き上げから対外PRまでを担う組織だ。地域の皆さまによると、まだ課題も多いとのことだが、それでも、こうした仕組みがスタートした意義は大きい。

《本物の観光資源を!》

 
 第二の脱ドラマに向けた観光資源の磨き上げについては、観光の3要素である、文化と食、自然それぞれの磨き上げを意図的に進めた。
 文化については、本物の歴史資源を見せる施設の整備が主軸となった。もともと県立の歴史施設は、様々な課題を抱えていた。
 坂本龍馬記念館については、雄大な太平洋を臨む最高の立地にありながら、博物館仕様ではないために国宝や重要文化財といった「本物の」資源を十分に展示できないという弱点があった。また、山内資料館の老朽化により、近世の極めて貴重な歴史資源である山内家資料の保存さえままならないという状況であった。
 これらは、文化行政の観点からも大問題であったし、観光面から見れば潜在力を生かせていないということでもあった。このため、高知城歴史博物館や坂本龍馬記念館の新館建設に向かうこととなったのだ。
 これらの施設は、貴重な資源を展示するだけでなく、それらを保存し研究する機能も持つ。山内資料を本格的に研究すれば、近世の歴史を書き換える大発見があるかも、との期待もあるようだ。明治150年を期した新たな県史編纂事業とも相まって、研究が深まることが期待される。
 合わせて、地域地域の歴史観光資源の磨き上げも重要であった。大政奉還150年を記念して行った「幕末維新博」の狙いの一つは、後世に残る形で地域の歴史資源の磨きを行うことであった。維新博のサイトは全部で25箇所にも及ぶ。それぞれを磨き上げて、歴史観光の効果を地域に波及させようという狙いでもあった。実際。佐川の青山文庫には、志士間の書簡などビックネームがずらりと並ぶ。展示機能の強化は急務であった。その他にも、中岡慎太郎や吉村虎太郎の生家やジョン万記念館などなど、多くの英傑達ゆかりの地の磨き上げが行われたのだ。
 高知の食の素晴らしさは、全国的なアンケート調査などによっても明らかだ。ただ、観光資源としての一段のインパクトが必要であった。このため、2013年から16年にかけて、「高知家の食・県民総選挙」を実施した。地元の人が認める名店は、観光客には分かりづらいだけに魅力は大きい。投票によって県民が選んだとなると、「名店」である客観的な担保になる。これを材料としてPRしたのだ。
 3つ目の、自然体験資源の磨き上げは難しい課題だ。川も山も海も、それだけでは外貨を稼ぎ出す観光資源にはならない。言うまでもないが、そこに何らかの工夫が必要だ。19年から開始した「自然体験キャンペーン」の狙いは、地域の自然資源にこの工夫を施し、外貨を稼げるレベルまで磨き上げることであった。
 主要アウトドアメーカーであるスノーピークやモンベルの誘致にも取り組んだが、両社ともに自然資源の磨き上げの大変良きお手本となった。プロ中のプロの仕掛けによって、以前と変わらぬ川や森が、全国から観光客を誘うことのできるサイトへと変貌したのだ。
 新足摺海洋館から四万十川ジップラインなどなど、多くの施設が今続々と完成している。これらは、地域の自然資源を生かし切る仕組みだ。そして、自然体験資源のある地域は中山間地域でもある。故に、自然体験観光の振興は、課題であった地域への周遊の促進、ひいては、中山間対策そのものでもある。効果が早期に出やすい分野だけに、中山間対策の特効薬としての期待が大きい。
 今、コロナ禍によって、観光は苦戦している。特にインバウンド観光の展望は見えない。在任中は、経済効果の早期発現の観点から、まずは圧倒的なシェアを占める国内観光の活性化から着手した。その後、徐々にインバンド対応を強化したのだが、その中で、クルーズ船の誘致は上手く行ったものの、チャーター便など空路の誘致には苦戦した。この春先には、その展望が見えてきたところだっただけに、このコロナ禍は本当に残念である。
 しかし、ワクチン開発などによりコロナ禍は必ず終わる。その際、上記の歴史と自然と食の観光資源がフル回転してくれることを切に願っている。
 最後になるが、高知の観光の最大の資源は「人」だ。コロナ禍によってもその強みは変わらない。必ずや道は開けるはずだ!

(各論 農業 ① へ続く)