高知県知事時代

  • 産振計画⑦~さらなる飛躍願い~
  • 番外編

各論(農業編 下)

 高知県の農業政策には、その他にも多くの課題がある。その最大のものは、中山間の農業対策だ。本県農業産出量の6割は中山間からであり、中山間農業無くして本県農業は成り立たない。だが、中山間では一団のまとまった平地を取りにくく、土地改良などが困難な場合が多い。言うまでもなく、生産性向上などをはじめとして、その課題は多い。

《未達の目標》

 後に、国は、一団の土地でなくても、複数の土地をまとめて一定の面積が確保できれば土地改良できる制度を創設した。北川村の皆さんの政策提言が実ったものだ。こうした形で、今後も、国の農政を中山間の実情にあったものに変えていく努力を継続していく必要があるだろう。
 また、生産量に限りがあり、コスト高にもなりがちな中で、どうやって高付加価値な作物を作っていくかも大きな課題だ。本県が日本一の生産量を誇る、中山間のゆずなどの産品は、こうした努力の積み重ねによって育成されたものだ。
 歩留まりもあげねばならない。はねものや、低品質のものを、近隣で加工していくような仕組みも是非とも必要だろう。
 在任中には、中山間で農業に誇りをもって取り組む若者たちにたくさんであった。仁淀川町でお茶の栽培に取り組む農業者の皆さんは、急峻な土地での栽培量には限りがある中、その分、品質にこだわり、そして、関連商品も充実させておられた。産地に近いお茶カフェは山深い里の立地だが、一言で言えば、大人気である。他にも、土地の米を10数年のうちに全国トップレベルまで育て上げた米農家の皆さんなど、同様の努力に数々接することができ、むしろ、こちらが勇気付けられたことも多数ある。
 だが、そもそも跡取りのいない農地も多い。移住促進策と組み合わせて、どうやって若者の就農促進を図るかが課題であり続けた。在任中の新規就農者数は、2008年の114人から2016年には276人まで拡大したが、最終目標である年間320人はついに達成できなかった。
 移住相談会などにおいても、就農したいとする若者は多い。かたや、後継者のいない農地はたくさんある。耕作放棄地とするにはあまりにも惜しい農地だ。両者をつなげ合わせる仕組みを様々に国の制度も利用して行なったが、まだまだ不十分だと感じている。今後の大きな課題である。

《常に最先端を》

 土地が狭い本県にとっては、園芸農業の継続的な振興も極めて重要だ。土地の生産性を引き上げ、かつ、付加価値の高い作物を作るという方向性を今後も追求していく必要がある。
 在任中には、先人たちの努力を引き継いだ我々の世代の新たなチャレンジとして、環境統合制御技術を搭載した「次世代型高知新施設園芸システム」の開発と普及に力を注いだ。
 だが、今は「次世代型」と称してはいても、おそらく10年もたてば、これらも全国的に「当たり前」の技術となっている可能性が大きい。高知が日本の園芸王国としての地位を保ち続けるためには、たゆまぬ進化を続けて行かなくてはならない。
 こうした意図をもってスタートした事業が、「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発プロジェクトだ。「次世代型」がハウス内の大気のベストミックスを作り出して、生産性の向上を図ろうとするのに対し、「Next」は植物そのものの時々の生育状況を見える化して、最適な生育パスを確保しようとするものである。
 篤農家のデータを分析したAI によって理想の栽培モデルを作り出し、これを基に、産地の各ハウスにアドバイスを送り続けることによって、産地全体として生産性の向上を図ろうとする。更には、有用な成分の濃度をあげて付加価値をあげたり、市場の動向を見て、栽培スピードを一定調整したりといった形で、サプライチェーンマネジメントを強化しようとするものでもある。
 現在、農業の専門家からデジタル技術の専門家まで、100人以上の多彩な研究者が63の研究テーマに取り組んでいる。参加大学も、高知大学のみならず、高知工科大学、東京大学、東京農業大学、北九州大学と多彩だ。また、必要な機器やシステムの開発には民間から48社の参加を得ている。いわば、オープンイノベーション形式での開発プロジェクトだ。
 開発には一定の時間がかかるだろう。しかし、更なる生産性の向上、高付加価値化など、これによる効果は大変大きなものがある。
 更には、新たな園芸農業関連産業群の創出につながる可能性もあり、期待は大きい。現在の「次世代型」は、もともとオランダで開発した技術をベースにしており、関連機材などもオランダ製のものが多い。しかし、この「ネクスト」版からは、関連のセンサーなどの機材やソフトを高知で開発している。
 いずれは、この「ネクスト」版を全国、いや世界に普及していけるのでは、と期待している。世界人口の増加に伴う世界的な食糧問題の解決策のひとつとなるかも知れない。高知発のシステムや機材が世界に展開する夢も開けている。
 高知を日本の園芸王国から世界の園芸王国に変え、そして、高知に園芸農業関連の一大輸出産業群を作り出す可能性をもった、期待の大プロジェクトである!

(各論 林業 へ続く)