高知県知事時代

  • 産振計画⑦~さらなる飛躍願い~
  • 番外編

各論(水産業編 上)

 高知の魚は大変においしい。私は、東京勤務時代に赤坂の土佐料理店に友人を連れていくのが大好きだった。カツオのたたきを食べてびっくりする顔を見るのが嬉しかったからだ。数々連れて行ったが、「え、何これ!」など驚きまじりの声を上げなかった友人は一人もいなかった。
 藁で焼いたカツオに、ゆずポン酢のタレにニンニクを合わせて食べる、この食べ方の妙が大きいだろう。だが、一本釣りなどによって、魚を一匹一匹大事に獲るという漁の手法によるところも大きいだろう。日にもよるのだろうが、魚からして違うのだ。
 高知の水産業は今後大きな可能性を秘めている。日本食の普及と合わせて諸外国でも寿司をはじめ生魚を食べるようになった。しかも日本の良質なネタを探す業者も増えてきていると聞く。
 各地域の漁村にあって、世界を相手に若者がビジネスを展開する、そうした可能性が開けようとしてきているのだ。

《減少一方で!》

 しかし、漁村の実態は極めて厳しい。漁師の数が減るのみならず高齢化も進み、漁獲量も減少の一途を辿っている。こうした状況を何とかしようと産業振興計画では、数々の試みを展開した。
 第一は、漁の安定を目指す取り組みだ。漁の安定は暮らしの安定とともに、加工など更なる事業展開の基礎となる。
 このため、当初、黒潮牧場を12基から15基体制に拡大するなどの取り組みを行なったのだが、加えて、2期目以降は養殖の振興にも力を入れた。
 更には、資源の枯渇が心配されたマグロについて、人口種苗の開発にも着手した。種苗からの一貫生産が叶えば、需要に応じた生産などサプライチェーンマネジメントにも繋がっていく。残念ながら、天然種苗の漁の好調などによって、同事業は現在停止状態にある。だが、資源の枯渇は今後も懸念される。息の長い研究が今後も続けられていくべきであろう。さらに、カツオの陸上養殖という希望に満ちた取り組みも始まったときく。
 更に、空いた漁場での定置網の増設や生き餌の確保など、様々な試行錯誤が続けられてきた。今後、デジタル技術を生かして、魚の所在をより的確に把握し、漁の安定を図ることを目指すマリンイノベーションプロジェクトも展開される予定だ。
 高知の漁業生産額は、2008年の483億円から18年は497億円と、高齢化や漁業者の減少もあり、ほぼ横這いの状況だ。しかし、一人当たりの漁業生産額は同期間に約9800万円から約1億5100万円まで着実に上昇している。また、養殖の比率も29%から53%へ上昇した。釣漁業の良さもいかしつつ、安定し、かつ、付加価値の高い漁業を目指した更なる展開が望まれるところだ。

《加工によって》

 第二は、水産加工の充実である。採れた魚に付加価値をつける工程をできるだけ県内で確保したいと試みた。また、加工の仕組みを整えることにより、生鮮以外の多様な販路を確保できることも大きい。
 この水産加工の分野では、地域アクションプランとして、一からスタートした事業が多数ある。
 沖ノ島に初めてお伺いした時、天糸で釣ったブリは本当においしい、これを何とか地域振興に生かしたいと夢を語る男性がいた。この若き事業者は、いまや、県外にも店舗を展開して、宿毛の水産加工を引っ張っておられる。目指せ弥太郎商人塾などの県の人材育成事業にご夫妻で参加されていたが、あれよあれよと言う間に、大きく事業展開をされるようになった。
 現在までに、宿毛市をはじめ他の地域でも、規模の大小はあれ、水産加工は確実に展開が図られた。水産加工出荷額は、08年の約171億円から18年には約233億円へと3割以上拡大した。16年に誘致が決まった宿毛の大規模加工場も、19年7月には本格稼働した。輸出も視野に入れた工場だ。
 未だに、県全体として、冷蔵庫の整備などコールドチェーン全般の整備に向けて進めなければならい事柄は多い。しかし、輸出産業としての水産加工業が県内全域に展開することへの期待は誠に大きい。

(各論 水産業 下へ続く)