高知県知事時代

  • 産振計画⑦~さらなる飛躍願い~
  • 番外編

産振計画の構造②

 将来に亘り経済成長を促していくためには、新たな事業の誕生を応援する仕掛けも必要である。今の仕事を伸ばす対策を打ちながら、同時に、新しいネタを生み出す政策展開を図る。当たり前のことだが、こうした今と将来のポートフォリオを意図的に組む必要があるのだ。

《3タイプの取り組み》

 産振計画では、この将来の仕込みに関し3つのタイプの取り組みを進めた。
 第一は、当然のことだが、目指すべき姿に向けてやるべきことを先取りするやり方だ。食料品の地産外商のメインターゲットは、関東圏や近畿圏などの国内大都市圏だが、同時に、将来を見据えて外国への輸出の取組みも並行させた。
 相手国での検疫のクリアや商流の確保など、輸出を進めるためのハードルは高く、ノウハウの蓄積には時間がかかる。このため、細々とではあったが、国内向けと並行して取り組みを蓄積していったのだ。
 また、観光分野では全県的に実施した「であい博」「ふるさと博」の後は、「楽しまんと!はた博」「高知家まるごと東部博」などの地域別の博覧会を積極的に支援した。2013年から19年まで、4つの地域博覧会を支援したが、これは、県内各ブロックに広域観光組織を設立して、地域で自律的に旅行商品を作り出し、セールスできる体制の構築を狙ったものだ。
 農業分野では、環境統合制御技術を搭載した次世代ハウスの普及を目指して09年秋にはオランダのウエストラント市と協定を結んだが、これは、同ハウスの普及支援策をスタートする4年ほど前のことである。
 このように、将来の展開を睨んだ仕込みを各分野で意識したのだ。
 第二は、新たに商品やサービスなどを作り出す「仕組み」そのものを作ろうという取組みだ。シーズとニーズの出合いの場を県が作り出そうと努めたのだ。
 第2期産業振興計画からは、課題解決型の産業創出スキームとして、県内の一次産業の様々な課題を抽出し、それを解決する企業を募集して、応募があったものからプロジェクトをスタートさせるという取組みなどを始めた。
 一般に、シーズとニーズが出会い、事業として大きく育っていく確率はそう大きなものではない。数々生まれて育つのは一握り、ということもあるだろう。まして、経済規模が小さな自治体では、こうした出会いの場は少ない。だからこそ、将来の新たな事業を生み出すために、短期の採算から比較的自由な官がこうした場を常に構えておくことには、一定の意義があると私は考えている。
 第三は、目指すべき目標をもったプロジェクトを定め、そこに、参加企業を募集して様々なプロジェクトを生み出そうという、オープンイノベーション方式の取組みだ。「ネクスト次世代型ハウス」の取組みがその典型だ。環境統合制御技術の先をいく新たなシステムを生み出し、その普及を図ろうという取組みである。水産業分野でも「高知マリンイノベーション」の取り組みがスタートしたし、更には、林業分野でもこうした取組みが立ち上がっていく予定だ。
 第二、第三ともに、第3期計画からは、デジタル技術を生かしたプロジェクト創出を重視した。これからのイノベーションはデジタル技術を軸とするものが多くなるだろう。従って、本県も、デジタル関連産業の育成を積極的に進め、こうした一連の取り組みへの参加も促すよう努めたのだ。

《何よりも人》

 そして、もう一つ。将来に向けて何よりも大事なのは、人材育成の取り組みであった。ある産業を振興したいのなら、その分野で優れた人材を多数育成するか、招聘するかすべきだろう。
 この人材育成事業の先駆けとなったのは、食品加工分野などを中心に商品企画からプレゼンの仕方までを学ぶ「目指せ弥太郎商人塾」だ。人材育成こそ最大の近道とのアドバイスを受けて10年度にスタートしたものだが、臼井純子先生をはじめとした優れた指導者の熱血指導のおかげで、多数の地域アクションプランが同塾から生まれた。
 この成果をもとに、「土佐まるごとビジネスアカデミー」として人材育成事業を総合的に展開することとなったのだ。事業戦略作りやマーケティングなど、全16コースに年間述べ4,500人の参加を得るなど、現在も盛況である。
 他にも、将来の本県林業の発展を担う人材を育成するため林業大学校を設立したし、デジタル関連産業の振興を図るため、プログラミングからゲームデザインなどを学ぶIT・コンテンツアカデミーも開設した。更に「こうちスタートアップパーク」を開設して起業支援の取り組みも本格化させた。
 3つのカタカナ語による考え方、即ち、システム全体像の把握、県内外のネットワークの構築、新旧のポートフォリオ形成という考え方は、産業振興計画において、県勢浮揚を目指すために、その設計の核をなす考え方となった。
 実際には、各分野ごとにその成否は様々であったが、こうした考え方を大切にすることによって、場当たり的ではなく、一過性でもない、一連の取り組みをそれなりに展開できたのだと考えている。