高知県知事時代

  • 産振計画②~地産外商へ大転換~
  • 番外編

地産外商戦略の考え方

 産業振興計画では、核となる地産外商戦略を全ての産業分野で策定した。これまでと重複する点もあるが、その策定に当たって、全分野で貫いた3つの基本的な考え方を述べたい。

《2種類のツボ》

 第一は、各産業分野において、産業全般の底上げを目指した「産業成長戦略」の立案にあたっての考え方だ。
 産業振興計画では、全ての産業分野において、そのシステムの全体像を把握した上で、その川上、川中、川下の各段階の課題を分析し、どこにボトルネックがあるか、何が牽引役となり得るか、と「2種類のツボ」を見極めるよう努めた。
 前者を改善し、後者を伸ばすことにより、システム全体として「拡大再生産の好循環」をもたらすことを目指したのだ。
 どこがツボかは、産業毎に異なる。例えば、木材産業分野では、当時、川中の木材加工の規模が、川上の素材生産量に比べて狭小であった。このため、企業誘致も含めて加工工程の拡大に力を注いだ。また、川下では、全体の牽引役として非住宅の木造化促進が重要であった。この二つによって、素材生産から加工品の販売まで、木材産業全体の循環を拡大できる、と考えたのだ。
 第二は、個々の事業者に対する支援策立案にあたっての考え方だ。
 商品企画が課題、設備が課題、販路開拓が課題と、事業者によって抱える課題は様々である。その多くに応えられてこそ、県全体として地産外商が進む。
 このため、川上、川中、川下、それぞれの段階に対応した支援策を、できるだけ事業者のニーズに沿って取り揃えるよう務めた。特に多数の事業者を相手にする分野ではこの点が重要だった。
 だが、ニーズにできるだけ沿って、といっても予算や人員の制約もある。したがって、ここでも同じくツボが重要となった。分かりにくい場合も多かったが、川上、川中、川下の各段階で、ボトルネックと牽引役という2つのツボ探しを徹底したのだ。
 例えば、食品加工分野では、川上では、商品企画支援や事業戦略策定支援が、川中では衛生基準を満たした設備投資支援、そして、川下では地産外商公社による営業支援が肝となった。
 それぞれの段階で何がツボかを見極めるためにも、事業者の声を伺うことが大事であった。県職員は頑張ってくれた。お話を聞いて、それに応えることを繰り返す中で、県としての役割が徐々に明確になっていったのだ。
 言うまでもないが、これらのツボは、施策が実行されるにつれ、また、環境の変化に伴って変わっていく。
 例えば、第一の木材産業の例では、加工工程が強くなるにつれて、むしろ、山側における素材生産の生産性向上が焦点となっていった。
 こうした時々のニーズを掴んでいくためにも、官民協働の体制をとることが重要であったのだ。

《民間自らが》

 第三は、第二と矛盾するようだが、あくまで民間主体というスタンスを貫いたことだ。
 私が就任した当時、県産品の県外への売り込みを担う県関連の組織として、商品計画機構があった。同機構は、県内業者からこれという食品や特産品などを自ら買い上げ、自ら県外に販売していた。県の信用力も背景に県外大手とも自ら取引口座を開設し、サンゴなどの産品を最盛期には10億円弱ほどは売り込んでいた組織だ。
 だが、県内事業者が県外事業者と自ら取引するのでなければ、本当の意味での地産外商とはならない。お互いの信頼関係が結ばれ、次の、そのまた次の取引へと繋がっていくのでなければ、経済効果は限られたものとなってしまう。県の役割は、あくまで、県内事業者が自ら行うマーケティングを側面からサポートするものであるべきだ。当時は、こうした考えであった。
 このため、大きく飛躍するために、あえて後ろに下がる、という思いで、この商品計画機構を閉鎖し、新たに地産外商公社を設立することとした。地産外商公社は同行営業を行ったり、商談会の場を設定し、後追いのサポートをしたりはするが、自ら買い上げることはしない。「公社はサポート役で、主役はあくまで民間事業者」だと徹底したのだ。
 地産外商公社がお手伝いして成約した件数や金額は、設立3年目の2011年には1,327件、3.41億円であったものが、19年には9,896件、46.38億円にまで拡大している。これらは公社のサポートがあったとはいえ、全て事業者自らが結んだ契約だ。そして、これらの契約を契機に、事業者自らが新たな取引を拡大していったはずだ。
 商品計画機構を廃止した際には、取引事業者の皆様から大変厳しいお叱りを受けた。唐突感もあり、確かに申し訳ないことであったが、地産外商を本格展開するために必要な措置であったと思っている。
 ものづくりや観光など、他の分野でも基本的に同じ考えを貫いた。経済の担い手となる民間の皆様に対して、包括的ではあるが、官はあくまでサポート役に徹する、というやり方を徹底したのだ。

第五回「産振計画② 〜地産外商へ大転換〜」番外編②「海外への地産外商」へ続く)