高知県知事時代

  • 第十八回
  • 教育改革③
  • 2020年4月7日掲載

より骨太な施策を


「総合教育会議に臨む」

 教育分野でも、PDCAサイクルにより毎年度施策の改定を重ねた。
 他の分野と連携を図ったものもあった。例えば、防災教育、健康教育を小中高全てで行うこととした。これらも生き抜く力を付ける取り組みである。
 各地の学校にも度々お伺いした。
 校長の指導力の下、地域ぐるみで教育が行われている小学校では、地域の高齢者にすっかりなついた子供たちが、本当にかわいかった。長年続いた学級崩壊を専門家によって解消した事例には心底感心したし、山村では、給食の時間に中学生が小学生をかいがいしく世話する姿に、小規模校ならではの良さを実感した。現場からは誠に多くを学ばせてもらった。

《民意の反映》

 ただ、教育政策は教育委員会の所管である。知事の権限は、教育委員の選任と予算編成などに限られており、隔靴掻痒の感は免れなかった。
 この点、首長と教育委員から成る総合教育会議が、教育政策の方向性を示す教育大綱を定める、という新制度ができたことは、ひとつの転機となった。
 これは、政府の教育再生実行会議の提言をきっかけとしたものだが、私は2013年1月より同会議の委員を務め、この制度の推進派筆頭であった。
 常々、有権者の教育に対する関心は高いのに、その民意を受けて首長ができることが限定されすぎている、との思いだった。もちろん、個別の教育内容にまで、首長が首を突っ込むべきではない。方向性を示す大綱作りを担う同制度は、バランスの取れたものだ。
 16年3月、6回にわたる総合教育会議での議論を経て「教育等の振興に関する施策の大綱」いわゆる教育大綱を公表した。この大綱では、「時間はかかるが、本質的な課題」にも腰を据えて取り組もうと試みたのだ。

《チーム学校》

 教員の質の向上は、その最たるものである。
 職員研修の充実に加え、学校での日々のトレーニングの充実をもくろんだ。例えば、中学校では同一学年の同一教科をクラスごとに別々の先生が担当し、互いに教え方を学び合う教科会を定期的に持つこととした。福井など先進県に倣った「縦持ち」という制度だ。
 若手とベテランの先生がチームで不登校、いじめ事案などに取り組む仕組みも設けた。
 これらは、担任の先生に過度に頼るのではなく、学校の組織力を生かそうとする取り組みだ。「チーム学校の構築」として大綱の第1の柱となった。
 第2の柱「厳しい環境にある子供たちへ対策」では、放課後学習の一層の充実に加え、専門家の学校配置や心の教育センターの充実などの施策を講じた。
 第3の「地域との連携・協働」は、一連の取り組みに不可欠だ。
 幼児教育こそ重要という意見は根強い。「就学前教育の充実」を第4の柱に据えて、保幼小中の連携などの取り組みを強化した。
 まだまだ、やるべきことはたくさんある。
 知事最後の夏には、中山間の小規模校向けに補習として遠隔授業を行い始めた。教育の地域間格差をなくし、住み続けられる地域づくりにも資する重要な試みだ。今後、その本格的な展開が切に望まれる。
 全国最悪レベルの不登校への対策も、引き続き大きな課題だ。デジタル時代の到来にふさわしい教育内容の検討も必要だろう。
 ただ、小学生は全国上位、中学も全国と差が縮まるなど、学力は一定改善した。体力も今や全国平均並みだ。
 多くの教育関係者の大変なご尽力のたまものだ。今はただただ頭が下がる思いである。