高知県知事時代

  • 第九回
  • 産振計画⑥
  • 2020年3月27日掲載

時代の流れを捉える


「高知駅にも大表札が!」

 知事2期目には、産業振興計画も第2期計画として大幅にバージョンアップした。
 併せて、集落活動センター事業の開始など、中山間対策を抜本強化し、産振計画との連携を図った。
 第2期計画では、災害が多いという弱みを逆手に取って防災関連産業の育成に着手し、ものづくり地産地消・外商センターも立ち上げた。
 産学官民連携センター「ココプラ」を立ち上げ、同センターを拠点として、土佐まるごとビジネスアカデミーによる人材育成事業も本格的に展開し始めた。移住促進策を加速させ、その一環として「高知家」プロモーションをスタートしたのも2期目である。
 産振計画は景気対策にとどまるものではない。景気対策なら人手不足や需要不足など、時々の課題に対処する。国は財政出動や金融政策で対処し、県も公共事業の発注量の調整などを行う。
 しかし、産振計画は、本県経済の持続的な発展を目指して、経済体質そのものを抜本強化することを狙ったものだ。このため、できるだけ「今の振興策」と「将来の振興策」の双方を同時に講じるよう努めてきた。
 例えば、ものづくり分野では、ものづくり地産地消・外商センターが事業戦略作りから販路開拓支援まで、事業者の今の支援を一貫して行う。
 他方で、将来の事業の種を生み出すためのニーズとシーズの出会いの場づくりや、デジタル化促進のための人材育成事業など、すぐに成果がでるものではないが、将来を見据えた施策も同時に展開していったのだ。

《知事の役目》

 将来をも見据えた仕事をするためには、通常のPDCAサイクルを超えた仕事が求められる。実際、PDCAサイクルに職員が習熟するにつれ、私の役目も変わっていった。将来に向けて、一石を投じる仕事だ。
 異次元の高みを一足飛びに目指すべく、その可能性を問い、指針を示す。将来への布石が必要な場合などには、特にこうした発想が必要だ。リスクも大きいだけに、これはトップが果たすべき仕事だと覚悟してきた。
 私は、この一石は、時代の流れの行く先を目指して投じるべきだと考えている。
 高知は地理的要因もあって、戦後の重化学工業化の流れに十分乗れたとは言えまい。だが、現在のデジタル化の流れは高知でも生かせる。むしろ、課題先進県としてデジタル技術によって解決すべき課題、すなわち、事業の種は多い。
産学官民のネットワークを構築し、デジタルなどの先端技術を生かして地場産業の高度化を図る。3期目に特に取り組んだテーマだ。

《内外の連携》

 よりスケールの大きな政策展開を図るために、全国の経財界との連携も重要であった。
 産振計画の推進にあたっては、これまで約40社と包括協定を結んだ。大企業の場合、社内PRだけでも効果は大きいし、協働事業に発展した例もある。
 経済同友会と地方創生に関して連携できたことも大きかった。全国的な木材活用促進の取り組みなど、意義ある事業を展開できた。改めて各社のご好意に感謝したい。
 そして、ここでも、時代の流れが重要であった。国が地方創生を展開し始めてから、全国の経済界の地方へのまなざしは好意的になった。更に近年のSDGs(持続可能な開発目標)重視の流れも、自然由来の産業振興を目指す本県にとって、明らかに追い風だ。
 時代の流れを捉える。県政の重要な視点であり続けた。