高知県知事時代

  • 第十回
  • 産振計画⑦
  • 2020年3月28日掲載

さらなる飛躍願い

知事3期目には、将来にわたって持続的な経済成長をもたらすような施策の展開を意識した。
新たな付加価値の創造こそが、経済成長の源である。これを継続的に生み出す仕組みを作ろうと、外部の知恵や先端技術と地元が交わるプラットフォームを各分野で構築しようと努めた。
「Next次世代型こうち新施設園芸システム」の開発事業はその典型だ。高知の誇る施設園芸をAIなども活用してさらに高度化しようと、現在130人以上の研究者が13の研究テーマ群に臨んでいる。また、機器やシステム開発には46社の参加を得ている。
世界の食料問題解決にも資するテーマであり、輸出産業として園芸農業関連産業群を高知に生み出すことを狙った事業でもある。
デジタルなどの先端技術を生かして地場産業の高度化を図り、世界と戦える産業に育てていく。より多くの若者が住み続けられる高知を目指し、重点的に進めるべきことだ。
デジタル関連の人材育成、企業誘致と並行して、漁業や林業分野でもこうしたプロジェクトが順次本格化しようとしている。
これらを効果的に進めるためにも、産学官民の連携が一層求められる。先述の「Next―」でも、高知大をはじめ県内外の大学との連携が核となった。
こうした取り組みは花開くまで時間がかかる。しかし、将来に向けて必要な仕込みだ。


「縮む経済から拡大する経済へ」
《まずは若返り》

2014年12月、政府が地方創生を目指して「まちひと仕事総合戦略」を打ち出した3ヵ月後、高知も全国に先駆けて、産業振興計画と健康長寿県構想などを融合した、高知版の総合戦略を発表した。
同戦略は四つの政策群からなる。A地産外商による雇用創出、B若者の県外流出防止と移住促進、C中山間対策、D少子化対策の推進、である。
AとBは雇用創出で高知に若者を増やすことを目指すもので、CとDは子だくさんの中山間を重視するとともに、少子化対策を徹底し、全体の出生率を引き上げようとするものだ。
このABCDの政策群が好循環をなすような状況を作り出すことによって、人口減少が当面続く中にあっても、経済を拡大させ、まずは若返り、いずれ人口増に転じることを目指している。

《11年たって》

産業振興計画を始めて11年。人口減少に伴って縮み続けた高知の経済は、今や拡大傾向に転じつつある。
01〜08年度に14.1%のマイナス成長となった1人当たり県民所得は、08〜17年度には全国のほぼ倍のペースとなる20.2%のプラス成長となった。中山間の1人当たり総生産額も、01〜08年度には7.9%のマイナス成長だったが、08〜16年度には20.6%のプラス成長に転じた。
良い傾向にあると言えるだろう。しかし、1人当たり県民所得の水準は全国平均の約84%にとどまる。良い方向に進んでいるが、今が良いとは言えない。
人口の社会増減について本県は、景気回復期には減、後退期には増となってきた。過去の回復期の半分ほどに減りはしたが、残念ながらまだ年間2千人超の流出が続いている。年間120組ほどだった移住者が千組に迫る勢いとなったことは明るい材料だが。
そして、出生率も回復したとはいえ、まだ1.48程度にとどまる。
何より、この新型コロナによる大打撃である。
緊急対策とともに、先述のABCDの好循環創出を目指して、より積極的な県勢浮揚策が必要な状況だ。
浜田県政の成功を願ってやまない。